【東芝ショック】今東芝に何が?ニュースで教えてくれない実態に迫る

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東芝の株価下落が止まらない。

2015年の不適切会計を皮切りに、原子力事業の7,125億円の損失計上、債務超過、半導体事業の売却懸念とニュースが連日報道されています。情報が出れば出るほど先行き不透明感が増しています。

2017年2月14日は東芝ショックの日になり、東京株の終値は220円安になりました。

創業140年を超える優良企業の未曾有の危機。

ヤバいのは誰でも分かる。しかしその内容や実体を正しく理解できている人がどれだけいるでしょうか?

もしかしたら世論に煽られているだけかもしれません。

こういう時こそ、事実だけを捉える冷静さを持っていたいものですね。

今回は、今話題の渦中にいる東芝の定性分析とファンダメンタルズ分析から実体を考察してみます。

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東芝は何をしている会社なのか?

そもそも東芝の主力事業を知らない人が多いと思います。

電気機器の製造だと思われがちですが、四季報の【特色】欄にはこう書かれています。

総合電機大手。フラッシュメモリと原子力が2本柱、子会社に米国WH社。

6502東芝 | 四季報:株価・ニュース・業績 | 会社四季報オンライン

そうなんです。東芝は電機機器で儲けているのではなく、半導体と原子力で儲けているのです。

そして今回ニュースになっているのが、原子力事業の巨額損失と、これをカバーするための半導体事業の売却です。

収益の柱が2本ともぐらついてる、とても不安定な危機的状況なのです。

これが連日ニュースになっている主な理由でしょう。株価を下げる材料としては十分です。

次は、具体的に東芝の株価を下げる要因となったニュースの中身を詳しく見てみましょう。

不適切会計とは

画像元:東芝「不適切会計」とは、何だったのか | 週刊東洋経済(ビジネス) | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

始まりは2015年の不適切会計の発覚です。

これは主に次の4つの会計処理で粉飾を施し、決算を発表したというものです。

  1. インフラ事業の工事進行基準
  2. 映像事業の経費計上
  3. 半導体事業の在庫評価
  4. パソコン事業の部品取引

インフラ事業の工事進行基準

まずこれで477億円の不適切会計処理。

インフラ工事は1年で終わらないので、1年ごとに行う決算では受注した工事の進捗に合わせて収益と原価を割り振って計上します。

ここで、東芝は最初に原価を過小に見積もることで、原価が収益を超えた部分を計上しませんでいた。

買収したあの米ウエスチングハウス(WH)の案件では、発電所の追加工事に伴う原価増について、WHの見積もり3億8,500万ドルに対して、東芝は6,900万ドルで処理しました。

この段階からWHの影がチラついていたんですね。

映像事業の経費計上

これは88億円の不適切会計処理。

キャリーオーバーと呼ばれる手法を使いました。これは、主にテレビ事業で取引先に請求書の発行を遅らせてもらい、費用を翌四半期に先送りする手法です。

翌四半期で帳尻が合うとは言え、決算報告では時間軸が重要なために不適切会計と言わざるを得ません。

さらに、グループ間の未実現損益が消去されないという例外を利用して、東芝から海外現地法人へ販売する製品の価格を期末に増額させていたこともありました。

半導体事業の在庫評価

これは360億円の不適切会計処理。

損失を認識していた上で、在庫の破棄まで評価損を計上しませんでした。いわゆる悪意の過失ですね。

滞留した在庫は後になって廃棄処理しました。

パソコン事業の部品取引

これは360億円で最大の不適切会計処理です。

東芝は仕入れたパソコン部品を台湾の組み立て会社に、原価の4~8倍で売ることがありました。この価格をマスキング価格と言います。

この調達価格とマスキング価格の差額を利益計上していました。

ただ、東芝は組み立て会社から完成品を買い戻すため、市場で売れなければ無意味です。そこで、部品を押し込み販売し、瞬間的に利益をかさ上げしました。

結果、売上高より営業利益の方が高い決算報告書が完成しました。

参考記事

東芝「不適切会計」とは、何だったのか

原子力事業の巨額損失

東芝ショックの最大の原因である原子力事業の巨額損失。その実態は一体何でしょうか?

それはのれん減損額です。

のれんとは?

のれんとは株式投資家でも知っている人が少ない単語だと思います。

のれんとは、企業を買収した時に発生するもので、買収金額と買収した企業の純資産との差額のことです。

のれん減損額があるということは、企業の純資産総額よりも高い値段で買収したということです。なぜ損するのにわざわざ高く買うのでしょうか?

そもそも「のれん」とは目に見えない企業のノウハウやブランド力の価値です。この価値はプライスレスで、見積もりが明確にできません。なので通常はこれを資産として計上できません。

しかし、例えば純資産100億円の企業を200億円で買収したら、その瞬間に100億円の損失が発生した、というのは実体に合いません。

そこで、会計上では200億円で100億円の純資産と100億円ののれんを買ったと考えます。

そして、日本ではのれんは20年以内に償却するルールになっています。のれんは資産計上できないので、減価償却の仕組みを応用して少しずつ辻褄を合わせます。

なので、巨額の買収で巨額ののれんが発生した場合は、最長で20年間巨額の「のれん償却費」が発生するので営業利益がその分減ります。

東芝の「のれん償却」は?

東芝の「のれん償却」には買収した企業の損失に伴う特別損失も含まれていると考えられます。

では東芝の「のれん償却」の影響はどの程度のものなのでしょうか?

16年第3四半期までの営業損益見通しを見てみましょう。

まず、のれん償却による減損額を計上する前の営業利益は1,678億円あります。実は事業の収益力は改善しているのです。

一方、のれん償却費はというと、7,125億円

買収が巨額なために、のれん償却費も巨額になり、営業損益は▲5,447億円になってしまいました。

続けて16年通期の営業損益見通しはと言うと……

まず、のれん償却による減損額を計上する前の営業利益は3,025億円です。

ここから第3四半期同様にのれん償却費を7,125億円引きます。累計なのでのれん償却費を2回計上してるわけではないです。

すると営業損益は▲4,100億円になります。

つまり、ここでのポイントは2つです。

  1. 巨額損失の実体はのれん償却費であり、実際には支払いは終わっているので今後の損失は現金が出ていってるわけではない。
  2. 事業の収益力は改善している。

なので、メディアが言っている損失の文字をイメージ通りに受け取ってしまうと実体と乖離が生じます。この場合は会計上の損益よりキャッシュフローが重要だと考えられます。

ただし、この買収の背景とキャッシュフローが好ましくないことには気を付けなければなりません。

S&W買収の背景とその後

始まりは米国AP1000建設プロジェクトでした。AP1000とは東芝が買収したウェスティングハウス・エレクトリック社(WEC)が開発・販売する2ループ構成の加圧水型原子炉です。

東芝のWECがS&Wと共同事業体となり、このプロジェクトを進めることになりました。

しかし受注後に規制強化がありました。そしたらコストは増加し、プロジェクトの進行は遅れました。

このコスト負担と遅延による納期変更で話がまとまらず、客先と訴訟になりました。WECとS&Wの間でも訴訟になりかけました。

東芝は新たな工事損失負担と親会社保証の発現防止、建設の加速という課題を抱えました。

そこで東芝は訴訟問題を一発で解決しようとS&Wを買収しました。さらにはコスト増、納期延長による損害賠償を回避しようとしました。

買収はできましたが、その後コストの再見積もりが必要だと気づきました。工事の作業効率もなかなか思うように改善しませんでした。

結局、見積もりのコストは増えてしまいました。

東芝はS&Wの買収に使ったのれんの減損と増加したコストを負担しなければならなくなりました。

東芝はなんとしてもこのプロジェクトを完遂しなければなりません。

まさに社運が懸かったビッグプロジェクトです。

債務超過の実体

債務超過とは、持っている資産より負債のほうが多い状態のことを言います。

16年9月末の株主資本は3,632億円。これに第3四半期の改善見通し660億円を足して4,292億円。

一方、今回の原子力事業ののれん減損等で6,204億円が株主資本から引かれます。

結果、12月末の株主資本は1,912億円のマイナスとなり、負債が資産を上回る債務超過に陥ります

実質、東芝は投資家から募った資本金を全額溶かしたことになります。

これで株価が0円になるわけではありませんが、株主としてはショック。

しかしそれよりも遥かに重要なのが融資です。

銀行は債務超過を許さない?

銀行は顧客企業に融資するにあたって財務上の制限条項を課します。

この条項が守れなくなったとき、銀行は新規融資をストップしたり、融資金の一括返済を要求したりします。

そして、この制限条項の1つが「債務超過とならないこと」です。

とりあえずは金融機関は融資を2017年3月末まで継続する意思を示しましたが、予断を許さない状況でしょう。

もし一括返済を求められたら、東芝にはそれを賄えるほどの現金同等物を持っていませんから実質倒産してしまいます。

企業としては、存続が最重要なのでどんな手を使ってでも債務超過を早急に解消しなければなりません。

上場廃止の可能性

融資ほど致命的ではないにせよ、社会的信用を大きく失うのが上場廃止です。

証券取引所の一部・二部の債務超過における上場廃止の基準は次の通りです。

債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき(原則として連結貸借対照表による)

上場廃止基準 | 日本取引所グループ

なお、東芝は3月末での債務超過解消を見送り、二部へ降格する見通しとなっています。

債務超過の解消には半導体事業の売却が鍵を握っていますが、焦って3月末までに売却するよりも年度を越えて売却した方がより高く売れると判断したようです。

また、ここからさらに1年間で債務超過が解消されなければ上場廃止になります。

債務超過を解消するための資本増強が急務です。

半導体事業の売却

半導体事業は東芝の収益の柱の1つです。

債務超過の解消のためにはこの事業の売却が必要です。

当初は、この事業の株式の20%未満を売却する予定でしたが、損失額がより大きくなる可能性があるため、最大100%売却の可能性もあると言われています。

過半数のキープにこだわっている場合ではないことがわかりますね。

東芝の今後の方針

東芝は、これだけの損失を起こした原子力事業を「お客様に迷惑をかけないよう」に継続する意思を示しました。

一方で、収益の柱である半導体事業は売却します。

そして、社会インフラ事業を新たな収益の柱にしようと計画しています。

資金繰りを改善しつつ、新たな収益の柱を完成させられるかどうかが東芝の将来を担っていると言えそうです。

ファンダメンタルズ分析

企業の本質的価値を計る、ファンダメンタルズ分析をしてみましょう。

事業価値

事業価値は普通直近の営業利益10年分で見積もります。

しかし、東芝の場合、将来の現金の支出を伴わないのれん償却が大きすぎるため、実質的なキャッシュフローとの乖離が大きくなりそうです。そこで、のれん減損前の営業損益で考えてみます。

東芝は発表した2016年度通期ののれん減損前の営業損益は302,500百万円なので、事業価値は

302,500 × 10 = 3,025,000(百万円)

となります。

非事業資産価値

非事業資産価値は現金及び預金と投資有価証券の合計です。

第2四半期の決算短信より、

524,493 + 366,255 = 890,748(百万円)

となります。

有利子負債

有利子負債は借入金の合計です。これは第2四半期決算短信より、

1,418,416(百万円)

とわかります。

株主価値

株主価値は、上記の「事業価値」「非事業資産価値」「有利子負債」の合計です。

3,025,000 + 890,748 – 1,418,416 = 2,497,332(百万円)

株主価値株価

この株主価値を株価に換算してみましょう。株主価値を株数で割ります。

2,497,332(百万円) ÷ 4,233,990,226 ≒ 590(円)

営業損益の要因がのれん減損額であることを考慮すれば、東芝の株価は590円でもおかしくないという結果になりました。

今の株価が200円ぐらいですから、のれん減損でかなり売られていることがわかります。

しかし問題は東芝が存続できるかどうかです。

確かに最大20年間ののれん償却をこなせば損益計算書の数字はかなり改善しそうです。

問題はその期間の資金繰りができるかどうか。

まず債務超過を解消し、財務諸表の数字が回復するまで融資がストップしないように繋いでいかなければなりません。

当座比率

足元の資金繰りがこなせるかどうかは当座比率で評価できます。

当座比率は当座資産(現金、預金、受取手形、売掛金)を流動負債で割ればわかりますので、

1,645,041 ÷ 2,491,054 × 100 ≒  66(%)

となります。

ここは安全圏のボーダーである80%を超えて欲しい所。借金過多と言わざるを得ません……

自己資本比率

自己資本比率は自己資本を総資産で割った値です。

698,116 ÷ 4,832,782 × 100 ≒ 14.4(%)

これの安全圏は40%です。どんなに甘く見積もっても30%が無いと危険です。

これが14%ですから、当座比率と合わせて考えると防御力はほぼ皆無、丸裸の印象を受けます。

ファンダメンタルズ総括

ここからは個人の見解です。

まず、稼ぐ力はまだあると言えるでしょう。この国の社会インフラを140年以上支えてきた企業です。商品が無くなると困る人もまだまだいると思うので、市場はあるし、武器となる商品力も持っているはずです。

一方で、財務基盤がこれほどかというほどに脆い。あと1回小さな小石にでも躓いてしまったら今にも倒れそうです。最悪、何もなくても1手間違えただけで倒れるかもしれません。

のれん減損、債務超過、当座比率、自己資本比率、どれを見ても危ないという印象です。

守りの見通しが立たない限り、株価は下降トレンドを続けるでしょう。

まとめ

東芝ショックとひと言に言っても、その実態はかなり複雑です。

巨額損失の実体はのれん減損によるものでした。これは帳簿上の話に過ぎません。

しかしこれで債務超過になってしまいました。債務超過は株式の上場と融資に危機をもたらします。

この債務超過を解消するために半導体事業を売ることにしました。

これが東芝ショックの実態です。

ニュースで報じられていることは、要点はわかりやすいですが断片的な情報でしかありません。じっくり語るほど尺も枠も無いのだと思いますが……

表面的な情報だけでわかった気になり、判断すると本質を捉えることはできませんね。

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